もの忘れが多くなってきたのですが病院を受診した方がよいですか?
何科へ行けばよいでしょうか?
はい。早めの受診をおすすめします。もの忘れの影に、気付いていない病気が隠れている場合があります。
「もの忘れ外来」「認知症外来」のある精神科や内科、認知症疾患医療センター、神経内科、老年病科などを受診するのが良いでしょう。
かかりつけ医がいれば、相談してみましょう。
認知症と加齢によるもの忘れとの違いは何ですか?
簡単に言うと、もの忘れを自覚できているかどうかです。「覚えていない」と「思い出せない」の違いですね。
言われて「あ、そうだった」と思えるのが、加齢によるもの忘れです。認知症は食事をしたこと、外出したことなど、できごと自体を忘れます。
加齢によるもの忘れは、食事の内容を忘れても食事をしたことは覚えている、というようにできごとの一部だけを忘れるものです。
知人の名前が思い出せない「ど忘れ」は加齢によるもの忘れです。
認知症の人は、自分が認知症だとわからないのでしょうか?
特に初期から中期の頃には「もの忘れが増えてきた」「失敗することが多い」との自覚があり、不安や焦り、「このまま自分や家族はどうなってしまうのだろう」「迷惑をかけてしまうのではないか」などとの心配をしていらっしゃいます。辛い時期とも言われています。
不安のあまり、イライラしたり、自分のもの忘れを認められず、周囲の人から指摘されると怒れてしまう方もいらっしゃいます。

暮らしやすい環境を整えることで、少しでも安心して過ごせるようにしていきましょう。
怒りっぽくなってしまい、困っています。
怒っている時は、まずは落ち着いてもらえるように、ご本人の言い分に耳を傾けたり、場所を移したりして状況を変えましょう。できればお茶を飲んでもらったりして、介護者も一呼吸おいて落ち着きましょう。
どんな時に怒りっぽくなりますか?怒る理由を考えてみましょう。ご本人も介護者もゆったりした気分の時に、困っていることがないか尋ねてみてもいいですね。
ご本人の不快の原因を探り、できるかぎり取り除くことが大切です。
ご本人の嫌がることを無理強いせず、やりたくなるような誘い方ができるといいですね。
日ごろから適度に運動を取り入れ、ストレスの発散を心がけましょう。ご本人が楽しいと感じることを一緒にしていただくこともよいと思います。
またイライラの原因が便秘など体調不良のこともあります。ご本人が体調不良をうまく表現できない場合もあるので、イライラしやすい時にはかかりつけ医に相談してみましょう。
本人が受診を嫌がります。どうすればよいでしょうか?
「病気ではない」「病院へ行く必要はない」との発言には、今までできていたことができなくなってきたことへのやり場のない悲しみや憤り、今後の不安から自分を守ろうとする自己防衛の本能が働いていることが多いです。家族も一緒に不安や心配の相談に行く姿勢が大切です。ご本人が困っている症状(不眠や食欲低下など)があれば、それをきっかけに受診をすすめてみましょう。
日ごろから内科や歯科など医療機関へ定期的に受診や健診へ行く習慣がついているといいですね。
「健康寿命を延ばすために」「気になっていることを聞いてもらえる」「先々の心配を減らすために」などとポジティブな印象を伝えることで受診に前向きになれることもあります。
家族が「あなたを心配している。私を安心させるために一緒に病院へ相談に行ってほしい」とお願いするのも良いでしょう。
かかりつけの先生やご本人が信頼している第三者からすすめてもらうのも良いと思います。
認知症は進行しやすい病気です。「認知症とは」のページで触れた周辺症状は、家族と一緒に早めに専門医療機関にかかっていると、相談ができたり、アドバイスを聞くことができたりし、症状が重くなりにくいように感じています。
また、ご本人に嘘をついて病院へつれてくると、家族関係がこじれてお互いに辛い思いをすることもあるので、できるだけ嘘をつかないで病院へ来ていただくことをおすすめします。
「家族に財布を盗られた」と言ってくるので、家族はつい怒ってしまいます。
「盗んだ」と言われてしまうことは悲しいことですよね。そんな時は一呼吸おきましょう。その後、一緒に探すとご本人も落ち着くかもしれません。
妄想はご本人が信頼している身近な人に向けられやすい傾向があります。被害的な発言に周りの人が辛い気持ちになり、つい否定するような言葉が出てしまうかもしれませんが、否定されることでかえって妄想が強くなることもあるので、少し余裕をもってご本人の話を聞いてみるように心がけると良いでしょう。
否定的な発言が出ている時は、いつも以上にご本人に寄り添う時間を多くとられると良いと思います。
大切なものがなくなって困っていることに共感をしながら一緒に探しましょう。
周囲の人が見つけた場合は、本人が見つけられるよう誘導しましょう。自分で見つけたことにより自信の回復や安心感を得ることができます。逆に人に見つけてもらった場合は、「その人が隠していた」との不信感を持つことがあります。
また、見つかった時には一緒に喜ぶと、「この人が盗んだかもしれない」との気持ちが軽減しやすいようです。

日ごろから財布をしまう場所を確認しておき、できるなら定位置のラベルを貼りましょう。また、収納場所がたくさんあると、見つからなくなりがちです。本人と話し合いながら物や家具を減らすのも良いでしょう。
認知症の進んでいる方には似たような別の財布を見つけてもらう、などの方法で落ち着くこともあります。大切なもの(通帳、保険証、印鑑)は渡さず、それに似たもの(古いバージョンのもの)などを代用しましょう。
黙って外出し、迷子になってしまうので困っています。
「ひとり歩き」には様々な理由があります。
見当識障害(場所や時間、日付などがわからない状況です)により、慣れているはずの道に迷ったり、今いる場所が知らない場所に思えて不安になって出て行ってしまったりします。
記憶障害により過去の時間に気持ちが戻って、母親のいる家に帰ろうとしたり、仕事に行こうとしたり、子どもを迎えに行こうとしたりしていることがあります。
前頭側頭型認知症の方であれば、同じ時刻に同じ場所を行き来する常同行為という症状があります。

ひとり歩きを止めようとすると、不満に感じ、場合によっては暴言・暴力、窓から飛び出す行為につながることがあります。
安心して外出できる機会を作ることが望ましいです。
まずはご本人に外出の目的を尋ねてみてください。目的のある場合はそれへの対応を図りましょう。
目的がわからない場合も、出かけようとする時間帯や状況などから推察してみましょう。もしかすると不快な状況(熱い、寒い、うるさい、臭い、明るすぎるなど)を避けようとしている、痛みやかゆみがあって落ち着かない、ということがあるかもしれません。
そのうえで一緒に出掛ける、座りっぱなしにさせず軽い運動をする、本人の役割を作る、趣味に取り組む時間を持つ、前頭側頭型認知症の方には散歩の時間を決めておくなどの取り組みを試みましょう。
センサーマットやGPSの利用、上着に名前と連絡先が分かるものをつけておく、近所の人やお店、警察、いきいき(地域包括)支援センターにあらかじめ相談しておく、はいかい高齢者おかえり支援事業へ登録するなどの準備をしておくと安心です。
骨折をして、安静にしていなければいけないのに動いてしまいます。
痛みを感じていないのでしょうか? 
認知症の方は痛みの訴えが少ないようです。痛みを感じていても言葉として表現できず、落ち着けずに動き回ることがあります。痛みのコントロールをすることで落ち着く場合もあります。
そのため、周囲の人たちが理解し、注意深く見守ることが大切です。